1個のレンガが町を救う
通貨安により、世界で食料品から公共料金、ガソリンまで生活必需品の値上が
りが深刻化している今日、デフレの日本では大半の物価は下がる一方。食品業界
においても大手の価格戦略が激化する中、デフレでもインフレでも共通して問題
となっているのは、生産者が商品を安く買い叩かれる現状や販売側が安さを求め
ることによる質の低下です。消費者の信頼がますます不可欠となっている現代に
おいて、 消費者が安心して食べられ、生産者が価格の心配なく自信を持って質の
良い商品作りのできる環境は理想的でありながらなかなか難しいのが現状です。
そのような中、イギリスで『ザ・ピープルズ・スーパーマーケット』という小
さなスーパーマーケットが話題になっています。年間25ポンドを払うと誰でも会
員になることができ、店の商品を10%安く購入できます。この店の驚くべきは、
なんと店のスタッフがお客さんだという点。19名の有給スタッフ以外は全て会員
が月に4時間無給で働くことで成り立っているのです。そのため人件費が売り上げ
の10%以下に抑えられ、その分、質の良い商品を生産者も納得の価格で仕入れる
ことができるのです。会員の職業は裁判官やシェフ、軍人、無職と様々。立場の
異なる地域のお客さんたちが仕入れ・運営・レジ打ちまで行うことで、顧客はも
ちろん、生産者の立場にも立った運営ができるのだと言います。
100人でスタートしたこのスーパーは発足から一年で1000人以上にまで増えて
います。一人暮らしの80歳を超えるある会員は、この店のお陰で孤立せずにいら
れると話しており、製造業者も「正当な価格で買ってくれるためありがたい。ザ
・ピープルズ・スーパーマーケットに卸すことは一種のブランドになっている」
と話しています。年内には別の地域に二号店オープンの予定もあるようです。こ
の地域は、他の大手スーパーが市場制覇を狙って新計画を打ち出していたところ
に地元住民の激しい抗議運動が起こった場所です。地元の人は品ぞろえ豊富な大
手のスーパーでなく、このザ・ピープルズ・スーパーマーケットを望んだのです。
現在地域の人にレンガを1個1ポンドで買ってもらい店の建設に必要な資金250万
ポンドを捻出しているのだそうです。
お客さん=パートナーだと考えることで、みんなでお店を支え、また地域のコ
ミュニティーを活性化させようというこのスーパーの姿勢は、街の商店街が活気
を弱め、孤独死が増えるなど人とのつながりが希薄になりがちな今の日本でも地
域活動の在り方として参考にすべき点も多いのではないでしょうか。願わくば、
そんな地域の人の声がよりスムーズに取り入れられる日本へとなってほしいなと
思います。(アルフィックス日報第3532号)
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